fumiLab

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10年ぶりに物語を読んで感嘆 (r-906 観測記録)

久しぶりに物語の本を読んで感嘆してしまったので記録しておきます。ネタバレはありません。 毎月記事を書く宣言をしたのに博士公聴会や最終審査などがありできませんでした。。少しオーバーランしましたが6月分としてこの日記を投稿させてもらいます。

概要

半信半疑なところがありましたが、いい意味で裏切られました。たかが本なんですが、トータルの体験として素晴らしく、一つの没入体験ができる新しいタイプの本でした。物語そのものもそうだし、自分が手にしてるこの物理的なものの意味みたいなのも含めて、意味のないものはない、というレベルで考え抜かれ、作られている本でした。まるで今流行りのARG(Alternate Reality Game)のような、物語を読んでいるんだけど自分の世界で持っている本が、自分が手にしているものは登場するそのものであるかのような錯覚を覚えます。

なかなかこれが体験できるものは映画、曲など含めて錚々ないと思うのですごく価値があるものだと思いました。

本を読み慣れてない人には確かにボリュームもあるし読み進めるのが大変かもしれないけど、最初の50Pくらいで慣れていけばあとは一気にいけます。

背景

実は物語、ファンタジーが大好きで小中学校で一番本を借りてた。毎日1-2冊は読んでた気がする。そこからラノベなり、アニメなりと手が伸びていきましたが、運動部やったり技術系をやり始めたりしてすっかりご無沙汰になっていました。お気に入りは上橋奈緒子の守り人シリーズ、獣の奏者えりん、鹿の王です。

そんなことはどうでもよいんですが、正直にいってthe holeからハマってしまったこのボカロP、なんか物語も面白いらしく本を出したとのこと。

確かに匙ノ咒だったり、Catchyから始まるI-IVだったりの曲は結構意味深というか、背景がありそうな曲が結構多く、J-POPに多いシンプルな気持ちを歌ったものではなく闇がありそうな感じがしていた。こういうのは大好物だった….(面倒なオタク)そりゃ読まないわけには行かないよなってことで勢いで買ってしまった。存在自体は結構前から知っていて、すごい綺麗な装丁でこだわられててすごいみたいなクチコミを見ていた。確かに表紙もかっこいいし所有してて嬉しそう。

ということで早速ポチり、Amazonで速攻で届いた。Kindleかかなり迷ったが装丁をしっかり見ないと失礼だろうということで技術書をのぞいて趣味の物理本を多分10年ぶりくらいに購入。金ピカの栞?みたいなのがあしらわれており、上を見ると線のように各ページにラインがついている。なんかすごそうだぞ、とこの時は思っていたがこれも後で見返すときっちり意味があるものだったんですよね。

読む

正直いって、長すぎる。なのでしっかり読む時間が取れないと読めないだろうと思っていた。ちょうどこの本を買った時に海外出張が決まり14時間飛行機でモバイルバッテリーも使えないということで、オフラインで楽しめる娯楽があるといいなと思っていたのでちょうどここで見てみることにした。こうした本は連続性が大事なのでボリュームがあると尻込みしちゃって読まないんだよな。

ページ数にしてなんと350Pもあり、8ptくらいしかない極小の文字サイズ。やばいだろ。ちなみにこれは前作の会話記録のptよりも小さいサイズだそうです。限界まで詰め込んでる。いい値段もしますので安くしてくれようとしたのかもしれません。

読み始め、登場人物が色々出てくるのだが、イニシャル?しかないのでかなり見づらい、、というのが最初の印象だったが10分くらいしたら慣れた。最初は結構SFな感じで、ああそういう感じなの?と思ったがだんだんとしっかり物語色が出てくる。絶対飽きるだろうなと思っていた。実際に100P過ぎたあたりで飛行機早朝起きもありと疲労もあり寝ようかな…と思ったけど結局最後の350Pまで一気に読んでしまった。そんな魅力があります。さすがに300P超えたら疲れたけどね。最後の理解度が浅いのはそのせいかもしれない。

感想

詳しいところは本を読んで欲しいが、公開されている範囲で言うとこの世界の研究では扉を通して物語の中身を観測することで、登場人物として研究員が世界を見ていきます。なので形式的には短編小説がたくさん入ってるような感じなんだけども、実際にはそれぞれの話は大元の研究をしている世界に寄与していることで話がつながっているので面白い。最初はよくわからないんだけど、だんだんとその結びつきが強くなっていき一つの意味が生まれてくる感じ。その感覚がたまらなく面白かった。

作者がなんというか、意地悪で色んな意味で意外性があるので、ああこれってそういう….となることがたくさんあり楽しいです。(実はその気づきもどうなの?っていう考察もできます)←ここまで仕掛けてくるのやばすぎなんだよね。

それを見た上で匙ノ咒だったりを見るとまた違った見え方もするかもしれない。


匙ノ咒

特に個人的に気に入ったのはやっぱり作中でも最も力が入れられていた(ページ数が多かった)物語の匙ノ咒で、最近だとMusic Award Japan2026で最優秀賞を受賞したことで話題になりましたね。曲は軽快だがどこか闇がありそうな意味深な感じのドラムンベースで、Pencilさんが書いてる可愛い絵もその不安定性を引き立てて良いですよね。個人的にはr-906の曲で最も好きな曲の一つです。めちゃ盛り上がりがある曲なので究極に負荷がかかるトレーニングでよく使っています。r-906が書いてきた曲にはいくつかの時代があると思っていて、三日月ステップ、まにまにときてまた一つ新しい時代のr-906が始まったなぁという感じがしました。個人的にこの最も新しい系統の作品群が好きです。(これは本題ではないので今回は黙っておきます)

話を戻しますが、匙ノ咒の話自体はとてもシンプルなんだけども非常に考察のしがいがある考えられている作品です。終わった後、あ、これってそういうことか…え?じゃあ…みたいな思考が止まらない。オタクってこういうの好きでしょ?を地でいっていてる。いいぞもっとやれ。

で、後でもう一度読み返してみるとやっぱりそうじゃん….みたいな感じで布石があるのはもちろんなんですが作者が巧みに読んでる人を操ってきているのを感じます。(これは匙ノ咒だけでなく全体でそうなのですごい)叙述トリックだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

個人的にはこの本で一番魅力が感じられた物語でした。おそらくですが、この物語が先に描かれてから曲が作られてると思います。曲にない描写がたくさんありました。


装丁

「装丁」の話がありましたが、これはこの本を読んでいく上での没入感を高めている重要な要素の思えます。多分これがないとあるとでは話の理解度も、没入感もかなり変わってくると思う。話の核心に迫っていく時、自分が手にしているものの意味はなんだったのか、あしらわれているこの要素はなんだったのか、そういった、現実世界で自分が接しているものに突然意味が出てくることで、まるでこの本の話の当事者かのような意識が出てしまいかなり没入します。この辺は本当に上手いなと…一杯食わされたなって感じです。

本として表現できるあらゆることを使って最大限、読んでる人に訴えかけようとしている感が伝わってきました。絵を描いたり、文字を書いたり、曲も作れる、動画も作れるスーパーなクリエイターなr-906氏ですが、限られたツールでこういったトータルでの体験を提供しようとするところは本当に創作者としての意地というか矜持を感じます。

難しさ

正直にいって、話は簡単ではありません。ただ、確かに小難しいところもあるんですが、わかることだけ読んでいけば後でわかってきます。常に読んだところは100%理解する必要はなくて後も読んでいくと前の解像度がさらに上がっていきます。その感覚が結構楽しいところもありましたし、これが後の発見と考察につながっていくんだと思います。

ちなみに、自分は最後のところバカすぎて理解できませんでした。(今も)

一応r-906さんも鬼ではないのでエピローグでネタバラシみたいなのをしてくれてるんですよね。それ読んだんですがそれでもんんん???ってなっておりました….それでも何となくこういう感じなのかなという方向性は理解しているのでまあそういうもんなんだと思います。もしかしたらもっと賢い人だとそれまでの前で出てきた情報でバッチリ理解できるのかも。

当然SFと言いつつ、物語なのでこの登場人物ならこうするだろうなとか、そういうことに逡巡するのも楽しいです。このキャラクターがこういうことを言ったのはこういう思考があったからなんだろう、みたいな感じに。そこにこのキャラクターの人間味というか泥臭さを感じられてより一層キャラクター性を引き立てると思うんですよね。しかし、そこには直接言及されていなかったりも多いので、一般に難しい、と言えるのかもしれません。

でもこの文章を読むような物語好きな人はそんな苦労はないと思います。作者による、そうした読者の理解度の操作をされてる感を楽しむのもまた一興ですから。

まとめ

没入感の高い本であると言えます。体験としてのトータルパッケージの高さがあります。ただの本にこんなことを言ったことはないんですが、これはただの本ではなく作者が可能な限り本という体裁を用いてできることをした結果を詰め込んだもの、と考えました。

お勧めできるか ⇒ 物語好きな人なら間違いなくYES、自信を持ってお勧めしたい。

話が難しそう⇒ 部分的にそう。ただし、その難しさは意図的にされている可能性もある(物語の一部である、作者の思惑)のでそういったところまで含めて楽しめる人なら難しさは気にする必要ないです。

つべこべ高尚な言い回しをして話してきましたが、表紙がかっこいいとか(実は個人的には表紙デザインがかっこいいので買いました)、匙ノ咒のPVが可愛かったとか(個人的には碧が可愛かったのと妙な言い回しが気になっていた)などの動機でもいいのでぜひ物理本で手にしてみてください。私は強くお勧めします。

もし読んだら。。。私と感想戦しましょう。