※今回はものづくり回ではなく、運用回です。
2019年9月21日、道志村の椿荘オートキャンプ場で小学校1年生の女の子が行方不明になり現在も捜索が行われています。一刻も早い発見をお祈りしております。
捜索を行いました
道志村で行方不明になってる小1の女の子を捜索しました。実験や練習ではなく、現場での運用で得た知見を備忘録として残します。
行方不明になっている小1女の子の捜索を夜でも活動できる赤外線カメラ搭載ドローンを使いながら24日18時から25日6時までやっていました。
— ふみ (@fumi_maker) September 24, 2019
JICの知識がとても役に立ちました。 pic.twitter.com/HPqamVJ2dE
私はドローン(無人航空機)等の活用や開発に関する研究を行っています。日頃からドローンを使って大学内で荷物を自動で運んだり、北海道で毎年開催されている遭難救助の大会である、Japan Innovation Challenge(JIC)に参加しています。
昨日(2019年9月25日)、研究会の教授が、これから道志村へ夜間捜索へいく人を突然募りました。私はJICに2年間参加し、夜間捜索の経験がありました。大会や訓練ではなく本当に自分の力を困っている人のために使う機会がやってきました。参加を表明し、準備を行いました。
装備
ドローンに赤外線カメラを搭載することで、人間が捜索できない夜間でも空中から捜索を続けることができます。現場へ持っていった装備、どうやって捜索するか、捜索範囲などの作戦立てもJICとほとんど同じ要領で行いました。今回持っていった装備はこちらです。
機体
DJI Inspire1
DJI Inspire2
DJI Mavic2 Enterprise Dual
DJI Matrice210
赤外線カメラ
DJI FLIR ZenmuseXT1
DJI FLIR ZenmuseXT2
研究室の運用は基本的にDJIで固めています。運用経験やトラブルシューティングをこれまでに多く行っているので使い勝手がわかり、信頼できる機材です。と言っても実はXT2は現場での運用をやったことがなく今回結局あまり使えませんでした。高価な機材なので避けていましたが、積極的に使わないとダメですね。反省です。
赤外線カメラについて
ここでの赤外線カメラとは、赤外線を投射し反射してきた赤外線を写すもの(量子型・冷却型)ではなく、物体が発する熱源を検知することができる(熱型・非冷却型)というもので軍事用途にも使われる本格的なものです。
量子型赤外線カメラ(近赤外線カメラ)
いわゆるみなさんが想像する赤外線カメラというやつです。Webカメラを改造して赤外線カメラを作りましたというのはこれに当たります。Webカメラなどの一般的なカメラには近赤外線を遮断するフィルターがつけられており、これを取り除くことで赤外線が見えるようになります。数千円で買えるものもあり、比較的安価です。
ただしこの方式は人間が見えない赤外線が見えるカメラですので、我々が暗い場所でライトをつけて写真撮影をするように赤外線を投射して撮影しなければ何も映りません。つまり見えない光を使ってるというだけで可視光のカメラと変わらないです。夜間における捜索には適していないかもしれません。
熱型赤外線カメラ(熱線映像カメラ)
映画やシューティングゲームをやったことがある人ならお馴染み、熱があるところが反応するタイプの赤外線カメラです。これは生物や熱を持っているものが発する遠赤外線を検知するカメラです。冷たいところが青、熱いところが赤く温度分布として出るサーモグラフィーが有名ですね。このカメラは高価で数十万円〜数百万円します。
これは一切光源がない環境でも熱に反応してものを写すことができるため、人間などの生物を探索するのに向いています。しかしながら、温度差がないと全部同じ色となってしまい、原理的に単一色となってしまい、映像を見ることができません。温度差がはっきりしているものを見るのには適していますが、いつもで使えるものというわけではなさそうです。
今回の捜索では熱型赤外線カメラを使っています。
これは現場で実際に飛行した時の動画です。
ドローンに赤外線カメラを搭載した捜索の様子。
— keijitakeda (@keijitakeda) September 25, 2019
画面上方に疑わしき目標、画面下方から捜索隊が接近、眠っていた動物が逃げる様子が写っています。
動物の体温が残っているためその場所が明るくなっています。
夜間通常の捜索活動が行われない間にこういった調査が可能になります。 pic.twitter.com/TPwfP1t56B
実際に運用して得た知見
point
- 高度維持
- 赤外線設定
- 自動航行
熱型赤外線カメラ
- 観測対象物からの距離が離れれば離れるほど測定できる温度が低くなる。
- 今回はMavicEnterpriseDualとZenmuseXT1、XT2を試した。
- Mavic2EnterpriseDualは温度差がはっきりしたもの以外はみることが難しい。
- 熱源がはっきりしているものは相当良く見える。野生動物ははっきりと写り、何の動物かまで推測できる。
- 解像度と感度が高ければ高いほど、小さい温度差でも認識することができる。
XT1やXT2でも温度差が小さいときつい
端的に言うと枝葉がどこまであるか見えません。接触しないように高度を保とうとすると捜索対象が小さくなりすぎて見えません。FPVで可視光、捜索にIRと分けて使えると良さそう。
陰は見えん
当たり前だけど、カメラと捜索対象の間に何かあって遮ると見えません。そうなってしまったらもう仕方ない。角度を変えてなんども捜索するなどの工夫が必要かと考えられる。
対地高度維持
定期的に前を見つつ、高度を気をつけながら出来るだけ低高度で飛行するのは結構大変。対地高度を一定に保てるようにしたい。
手動の見逃し
手動だときっちり全ての領域を捜索するのが難しく、どうしても見落としが出てしまう。自動でやりたい。
赤外線カメラ設定
これをミスると何も見えない。
- 等温線
- 該当の温度になるとオレンジに出ます。
- 温度の分解能の設定
- 温度アラート
- 設定温度以上のところがあると教えてくれる
- ROI
- 空の靄を消して見やすくできる。
今後に生かしたいこと
- 自動飛行
- 与えられた範囲全てを捜索できる飛行
- 対地高度をきっちり保てる自動飛行
- Lichiは90m四方の平均高度より飛行計画を立てるので山のような急斜面では要注意である。
- GSProは対地高度一定不可。
- どうしよう。
- IRと可視光併用
- 手動操縦において、障害物を避ける・高度を保つために可視光FPV映像を見れるようにする。
- 投光器やライト等で強力に照らして夜間可視光でも見えるようにする。
- 2オペで操縦と捜索ができるようになりそう。M210とかInspire2はできる。
- 手動操縦において、障害物を避ける・高度を保つために可視光FPV映像を見れるようにする。
- 写真解析
備忘録程度の走り書きですみません。
今回はそんな感じです。